計算ミスを考える(1)「わからない、と、わかるけど間違う、は別物」
今回からは、しばらく「計算ミス」について考えてみたいと思います。
まず初回は、
「わからない、と、わかるけど間違う、は別物」
という点についてみていきたいと思います。
まずは、この問題を見てみましょう。
よく見る中学受験用の速さの問題です。旅人算ができて、線分図を支えて、単位をしっかり注意できて、みたいなところがポイントですが、少し整理をして行きましょう。
まず、この問題を解くには、以下の要素がきちんと備わっていることが必要です。
1)速さの3公式を適切に使える
2)分速、時速の換算の必要性に注目できて、かつ計算できる
3)線分図を書くことができる
4)必要な計算力が備わっている
というところです。
これらが備わっていると、こんな図がかけます。(汚くてすいません)
ここでは、文章を適切に図に出来るか、が大きなポイントです。これが書けてしまうと、あとは、計算を一つひとつして行けばよくなります。
ところが、ここで注意をしたいのが、たとえやり方を認識していても、
A 時速と分速、ならびにmとkmの単位換算が正確にできない
B 答える単位の見落とし
C 問題文の読み違え
D 計算間違え
が発生すると、
「やり方はあっているけど、結果としては正解しない、ということになります」
例えば、Aの単位換算が正確でないと、①や③で間違ってしまいます。
また、Bの答え方をしっかりみていないと、答えを「3000m」としてしまいがちです。⑤のところですね。
さらに、Cが起こると、そもそもやることを間違えますし、計算に課題があると、④あたりがすっと出てこないかもしれません。
大事なことは、1)ー4)の要素が備わっていて、この問題を解くための知識があって、この問題の解き方が「わかった」としても、AーDの要素がしっかり備わっていないと、この問題を正解しきることはかなわない、ということです。
私たちは、このように「やり方がわかっている」けれど、「答えが合わない」ケースを、概ね「ミス」と位置付けます。「うちの子は理解はできているのだけど、計算ミスが多くて。。」というような発言になるわけです。
しかしながら、このようにしてみればわかる通り、本当にそれは「計算ミス」が問題なのでしょうか?AもBもCも、同じように一緒にして「計算ミス」にしていないでしょうか?
もしも、彼の課題がBとかCにあるのに、計算練習ばかりしても、課題の解決にはなりません。それどころか、いくら辛い練習をしても効果が上がらず、「僕は算数が苦手」とか、本当はわかっているのに「算数わからない」となって行きがちです。
ですから、まず「計算ミス」と言っているその事象は、本当に「計算ミス」なのか?この点は、きちんとみてあげることが大事です。
そして、最も重要なのは、「わかっている」のに「できない」というのは、「わかっていないからできない」よりも、はるかに症状としては悪い、ということです。
このケースで言えば、もしも、1)から4)の要素のどこかができていないから「わからない」ならば、それをクリアにしていくことができれば、この問題はできるようになりそうです。そのように道筋が見えやすいです。
しかし、AーDのような要素が放置されていると、「わかっていても、できない」ならば、「わかっても仕方がない」ということになり兼ねません。
つまり、意欲が湧かなくなりやすい、ということです。
今回の結論は、こういうことです。
「わかっているのに、できないのは、わかっていない、よりもはるかに悪い」
ということです。ここは、逆に考えている方が多いですが、それは違います。わかっていないから出来ないのは、わかるようにすることができればできるのですから、割と容易なのです。
計算ミスが重たいのは、この「わかっているけど、間違う」の典型的な原因であることゆえ、となります。
次回はその計算ミスを分解していきたいと思います。